葬式が終われば・・・。

山野本 竜規

2008年12月13日 06:19

昨日、父の告別式が終わり
遺骨が我が家に戻ってきました。

10日の昼過ぎに
入院先の病室で父が息を引き取ってから
あっという間の3日間。

実は、僕、
父が亡くなってから
まだ一度も涙を流していません。
別に、自分が芯から強いとか、
我慢強い・・・ということを
自慢したい訳でも、
感情に欠陥がある・・・という訳でも
ありません。

父とのお別れだけに
心から専念できて
感傷に浸る時間があれば
思う存分に、そうしたいのですが
生憎、僕には
大好きな父の死だけに
目を向けている
時間すらないほど
やるべきことが沢山あります。

人は、
「こういう時くらい、思いっきり泣いて
 感情を表に出したほうがいい。」と
優しく言ってくれるものですが、
僕だって、
泣けるものなら
思いっきり泣いてみたいし
感情に任せて
少しくらいは、自暴自棄になってみたいです。

だけど、そういう気持ちにすら
なりません。

何度も言うように、
目の前には
やらなければいけないことが
山積みだからです。

父が息を引き取って
周囲の家族が動揺する中、
その一時間後には
葬儀屋のスタッフが病院に来て
亡骸を引き取りにきます。

何もかもが初めての経験ですが
その手順を病院のスタッフや
葬儀屋のスタッフに
事細かく聞いて
速やかに次の準備に移らなければ
いけないので、
一番冷静な僕しか
その役割はできません。

遠い場所に住んでいる親戚や
各関係者への連絡、
それが終われば
自宅に亡骸を迎え入れて
その後、葬儀費用の相談。

ここで、感情に流されていると
平常心ではないので
膨大な出費につながります。

葬儀スタッフの人件費(人数によって違う)や
葬儀の司会スタッフ料、
(喪主である僕が担当しました。)
祭壇の規模など
事細かな料金項目がある中で
抑えられる出費は
出来るだけ抑えるために、
僕や、もう一人、
冷静に対応する次女の
真剣な料金交渉を目の当たりにして
葬儀スタッフも
冷や汗をかくほど・・・。

葬儀スタッフの方には
無理を言ってしまいましたが
それでも、
最初の見積もり額よりも
30万円ほど
出費を抑えることが出来ました。

愛する家族の
人生最期のお見送りくらい、
豪華に飾りたい・・・と思う
遺族の気持ちも十分に理解できますし、
こういう時に
葬儀費用を安く済ませようと
考える
僕たちのような家族を
「情のない身内」「冷たい家族」、
「一体、どんな神経をしているんだ?」と
憤りを感じられる方も
いらっしゃることでしょう。

しかしながら
普通の家庭なら
いざ知らず、
今、僕の実家の事情は
なんとしてでも出費を
抑えなければいけない
理由があります。

いつ退院できるか分からない母の
治療、入院費の捻出、
これまでの父の入院費、
実家の維持費の
やりくりを
今ある貯蓄の中から
しっかり回し、
それに加えて
神社の運営を健全にしていく・・・
という
とてつもなく大変な作業を
並行して
行なわなければいけないからです。

長期的な出費を考えた時
父の死で動揺して
冷静な経済感覚が鈍り、
膨大な出費にならないように、
様々な諸事に
淡々と対応できる人間がいないと
全ての物事は、
うまく進みませんし、
それこそ、共倒れになってしまう
恐れがあります。

全てのものを
守っていくためにも、
こういう時は、
余計な情を入れずに
冷静に判断しなければなりません。

お通夜や葬儀では
僕が喪主を務めたのですが
とにかく、いつものように
冷静に、淡々と
そしてなるべく笑顔で
弔問者を受け入れ、
応対させて頂きました。

詳細は割愛しますが
中には色々な不満を
陰で言い合っているような
人たちもいたようです。

一体、何のために
お別れに来られているのか
僕には理解できませんし、
心は痛みますが、
このようなネガティブな
想念の持ち主の
矢面に立たなければいけないのも、
僕の役目。

それでも、
正直、そのような雑音を
気にしている暇も、
真に受けている暇もありません。

大好きな父に対する想いを
しっかり込めて
お見送りできたので
それだけで、僕は
自分のお役目を十分果たせたと
思っています。

父のお見送り関連で
残っているのは
あとは、
父が大好きだった神社で
神社に集う方々を対象にした
楽しいお別れ会。

こちらは、
本当に心から
純粋な気持ちで父を慕う方々が
集って下さいますし、
これから神社の代表を務める
弟が主体で動いてくれるので
僕は、お手伝いをしながら
母の看病と
様々な財務処理や手続きなどを
行なっていきます。

現在のような
激動の日々を送っていると
身内の死と
しっかり向き合って
感傷に浸ることができる時間と
余裕がある環境ですら、
本当は、とても有難いことなのだな・・・と
冷静に受け止める自分がいます。

きっと、全てのことが整って
沖縄に戻ることができる
明るい希望が見えてきた時、
僕自身、
ようやく、父のことを
思いっきり感じることができるのだと
思っています。

こう書くと、
僕が1人で無理して
頑張っているように思えますが
やっぱり、
姉弟、それぞれが
それぞれの役割分担をしながら
周囲の人に支えられながら
1日1日を生き抜いています。

僕の場合で言えば、
心から大好きな人たちが
近い場所からでも、
遠い場所からでも、
常に温かいエールを
送って下さって
勇気や元気を頂いていますので
これほど
心強いものはありません。

だからこそ、
どんな状況であったとしても
1日、1日を
乗り越えていけるもの。

きっと、こんなに
バリエーション豊富な
喜怒哀楽の出来事を
まとめて体感できる人生の期間なんて
この先、そうあるものでは
ありません。

だからこそ、
大自然の流れに任せて、
やるべきことを
淡々と、こなしていきたい・・・と思っています。
関連記事