RBCアナウンサー山野本竜規の「ナカトリモチ日記」

神社の神職は神と人との間を取り持つ「ナカトリモチ」。 神職資格を持つRBCアナウンサー山野本竜規が、仕事の 裏側からプライベートまで日々の出来事を皆さんにお届けします。
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2007年12月14日

人生は本番だらけ。

人生は本番だらけ。写真は、以前勤めていた放送局で
報道記者とカメラマンを兼ねていた頃のもの。

少数精鋭!?なのか、どうかは別として
僕にとっては、この何でも屋のような状態が
当たり前だったので
一通りの放送業務の基礎は身に付いているつもりです。

放送業界には、それぞれのプロがいます。

僕のような喋り手のプロ、カメラマンのような技術のプロ、
報道記者のような取材のプロ、
ディレクターのような番組構成のプロ・・・。

実は、ここ最近、テレビの中継や収録などをやっていて
関わるスタッフたちの中にも
ごく稀に「何年、この業界、やっているんだろうか・・・」と
放送のセンスを疑うようなスタッフを
見かけることが続いていたので
自分なりに、そういった人たちに共通している
悪い点が何なのか、ちょっと考えてみることにしました。

結論から先に言えば、
「本番」に慣れていないのが一番の原因です。

これは、生放送の本番ではなく、
人生の本番、あらゆる局面に立たされた時の
心の強さや度胸のことを意味しています。

人(ほとんど組織の上層部のことを指す)からの評価、周囲の評価、
そればかりを気にし過ぎて、
今、本当にやらなければいけない、
大切なことが見えていない人たちに、
そういったセンスのないような仕事をする人が多いような気がします。

では、その「センス」って一体、何なのでしょう・・・。

先日、あるゲストを迎えたテレビ収録があったのですが
こういった場合、一通りのリハーサルをやって
カメラワークや、時間、雰囲気などを把握してから
本番に入ります。

僕の場合、色々な仕事内容にもよりますが
どんなに多くても3回、リハーサルをすれば
番組、またはコーナー全体の概要を掴めるものですし、
ゲストがいる場合、その方に迷惑がかからないように
事前に、そういった打ち合わせとリハーサルをやるので
ゲストが現場に入ってからは、
何度も、何度もリハーサルをするようなことはしません。

しかしながら、今回の収録は、
カメラマンが焦っていて自信がなかったのか、
しっかり台本通りのやりとりをして、
しかも本番と同じテンションで収録をしたにも関わらず
「今のは、リハーサルで・・・」といった具合で、
まったく現場の空気が読めない人だったんです。

新人さんだったら、まだしも、
僕よりも年上でキャリアもありそうなスタッフなのに・・・。

例えば、皆さんが、本番と思って100mを全速力で走って、
それなりに良い記録が出せたのに、
「ハイ、今のは練習だから、もう一回、すぐに走って下さい!」と
当たり前のように言われたら、どう感じますか?

本番は、その一瞬、一瞬が真剣勝負で
失敗しようが、上手くいこうが、
泣いても笑っても一度きりです。

「もう一度、同じような記録を出して下さい!」と
平気で要求してくる人は、
そんな、当たり前の人の心が理解できない、
自分のことしか考えられない、心の感性が乏しい人です。

何故なら、常に周囲の評価だけを気にしているから・・・。

普通、喋り手というのは、
番組収録の場合、100m走のたとえと同じように、
本番のテンションで何度も何度も同じことを要求されると
1回、1回が真剣勝負なので、
ヘンに、こ慣れてしまうというか、パワー切れをしてしまいます。
ましてや、ゲストがいたら尚更です。

そして、新鮮さがなくなるので
妙に落ち着いた雰囲気、またはその逆で
うんざりした、ちょっと暗い雰囲気になりがちになる・・・という
番組制作に携わっていたら、
簡単に理解できることすら分からず
何度もリハーサルを繰り返すものだから、
ゲストさんと、その付き人、周囲にいた営業マンの顔が
だんだん曇っていくのが、ひしひしと伝わってきました。

僕は、カメラマンをやっていたことがあるので
プロまではいかなくても、上手下手に関わらず
何とか人様に披露できる程度の映像を写すことができる
技術は持っています。

そんな僕ですら、今回のカメラマンは、
「なんで、このくらいの映像が1回で撮れないんだろう。プロなのに・・・」と
呆れてしまうほどの焦りようで
周囲の、うんざりしている雰囲気すら感じ取れないほど
自分のことしか考えられないお粗末な仕事ぶりでした。

もちろん、現場の雰囲気を悪化させないために
周囲のフォローをするのは
ゲストの隣にいる僕の役目なので
「ライトが当たって暑い中、何度も同じこと繰り返してスミマセンね・・・」とか
「喋る内容に問題はありませんから、大丈夫ですよ~」とか
一生懸命、相手が不安にならないようにしなければなりません。

協調性のない、この僕ですら、チームで仕事をする時は
周囲をしっかり見渡してから、物事に取り掛かります。

本当は、その場で、空気が全く読めていない
カメラマンを注意したかったのですが、
そこで場の雰囲気を壊してしまっては
全て台無しになるので、ヘラヘラしながらも、
注意したいのを、グッと我慢して撮影を続けました。

こういった場合、仕事ができない人を
「あいつは、仕事ができないダメな奴だ!」と
責めたところで、何の解決にもなりません。

そして、それを本人に言わず、周囲の人だけで言っていたら
それは、悪口になってしまいます。

だから、こういった場合、
気づいた周囲の人たちが淡々とフォローするしかないんですけど、
やっぱり一度は、しっかりと相手に伝えておく必要があるので
僕も収録が終わり、ゲストさんや他のスタッフがいなくなったところで
そっと、そのことを伝えておきました。

これで、心から理解するのも、しないのも、
改善するのも、しないのも、あとは本人次第。

僕は、どんなに優秀な技術を持っている人だとしても、
それぞれの専門分野に長けている人だとしても、
一緒に仕事をする際に、
周囲を威圧したり、萎縮させたり、威張ったり、
逆に迷惑をかけていることすら気づかないような人は、
放送や仕事のセンス、
もっと言えば、人の心を理解するセンスがない人だと思っています。

放送に限らず、どんな仕事にしても
現場の雰囲気は、何よりも大切です。

今回だけでなく、他の番組の中継現場でも
別の若いカメラマンが同じようなことを要求してきたので
「こういった人たちには、一体、何が足りないんだろうか・・・」と
考えざるを得ない出来事が続きました。

今回のケースにしても、別のケースにしても
そういった心に余裕のない、仕事のセンスのない人たちを
冷静に見つめていると、
やっぱり、周囲の評価「だけ」を気にしすぎているような、
ある種、強迫観念に近い、
悲壮感が漂うほどの焦りっぷりでした。

勿論、その背景には、
「ここで上手く映像が撮れなければ、周囲の評価も下がるだろうし、
死活問題になるかも知れない・・・」という
厳しい現実があるのかも知れません。

僕は、フリーアナウンサーとして働いていた時期があり、
「いつ首を切られるか分からない・・・」「番組契約はこれで終わりかも・・・」という
不安がいつも付きまとうような経験をしてきているので
そういった厳しい現実も、しっかり理解しているつもりです。

だけれども、そういった厳しい局面に立たされた時、
そこで自分の身を守ることだけに走り、悲壮感を漂わす人なのか、
それとも、その気持ちをグッと心の中に仕舞いこんで
出来るだけ明るく、楽しく周囲と仕事を作り上げていく人なのかで
明暗は、ハッキリと分かれてくると思うんです。

僕の場合、仕事が頂けるだけで有難かったので
「正社員は働かなくても給料もらえていいよな・・・」なんて
よく契約・派遣スタッフがつぶやくような卑屈な心にならずに
楽しく淡々と、
その放送局の正社員スタッフと仕事がすることができました。

だって、僕だったら、
自分のことだけで頭がいっぱいの
卑屈で余裕のない人と一緒に仕事をするより、
それぞれの辛さや大変さを抱えていたとしても
笑顔で、淡々と仕事をしている人たちと一緒に作業をするほうが、
絶対に良い仕事ができると思っていますから。

逆に言えば、いつも「大変だ!、大変だ!」とか
「忙しい!、忙しい!」とバタバタ走り回って、
自分をアピールしている人よりも
いつも笑顔の人、淡々と仕事をしている人のほうが
よっぽど忙しいし、大変だし、辛い出来事を抱えながらも
頑張っている人が多いものです。

僕がよく、
「頑張るのは良いけれど、悲壮感を漂わさずにね・・・ピース」と
ことあるごとに言っているのは、
そういうことがあるからなんですよ。

自分の人生を、本当にしっかり頑張っている人、
そして、普通の人以上の、悲しさや辛さを抱えながらも、
毎日を一生懸命生きている人は、
いつも穏やかで、笑顔の人です。

みなさんの周囲に、そういった人はいませんか?

「辛い」「悲しい」「忙しい」「大変」・・・。
普段から、自分でそういったことを口にしている人、
または、そういった雰囲気を醸し出している人は
まだまだ、人生の大変さなんて、
微塵も理解できていない証拠です。

どうぞ、人生の本番、
あらゆる厳しい局面におおいにぶつかって
恥も、失敗も、絶望も、度胸のなさも、
いっぱい実感されて下さい。

きっと、それが、
今後の豊かな人生を送るための糧になるはずです。

だから、なるべく
余裕を持って、笑顔でいるようにましょうねピース

心のキレイな人や、周囲を幸せにするような出来事、ハプニングは
そういう人のところに自然と集まってくるものですからキラキラ 


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Posted by 山野本 竜規 at 06:09 │仕事